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暴落なんて怖くない!信用取引の賢い利用法

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出典:jp.wsj.com

海外市場の好調を受け、日本の株式市場も年初来から上昇傾向を保っている。
しかし、こうした環境下で値上がり益を追って更に収益を目指すことはそれなりのリスクも伴う。そのため、新たな資金の投入については慎重になることも多い。

相場上昇時、過度に暴落を怖れないで、投資金融資産の価値を保ちつつ上値を追って収益も目指す方法はないだろうか?
その方法の一つとして、信用取引を利用した運用方法の一例を紹介する。

投機と投資の違い

「投機」と「投資」については色々な解釈・説明があるが、ここでは資金供出者全体では必ずマイナスになる取引を「投機」、資金提供者全員が収益を出せる可能性のある取引が「投資」と定義する。
換言すれば「期待利益」の総和がマイナスの場合を「投機」プラスの場合を「投資」とも言える。
ここで取り上げるのは、スタンスを「投資」に置いた長期資金運用手段だ。

その1 バリュー株の選定

短期的な売買で収益を目指すのであれば、成長株やテーマに乗った株の運用も良いが、中長期的には下落リスクが高い。
テーマで動いた上昇スピードを越えて持続的な成長がない限り、いずれ下落(資産減少)の可能性が大きいからだ。

株式の長期運用は、いわゆるバリュー株(割安株)投資を基本に据えたい。
バリュー株にも色々なとらえ方があるが、優良な企業でありながら市場平均より評価(株価)が低い割安株が基本だろう。

具体的な指標例

●市場平均よりPERが低い。又は来期以降のコンセンサス予想PER
●PBR(株価純資産倍率)1倍割れ又は1倍程度
 ※但し、PBR算定の資産内容内の下落リスクが大きい有価証券等の保有割合等の吟味が必要
●倒産リスクが少ない → 負債、有利子負債額と純資産の割合などから判断
●良好な経営体制
 ※経営改革実績、長期間の同族経営ではない等判断基準は業種等によっても異なる
●安定配当実績 → 10年以上にわたり配当性向年2%以上維持、減配がない

バリュー株の例
銘柄
配当性向
純資産倍率
株価収益率
平和
2.7% (6412)
PBR1.4
PER9.6
日産自動車
4.3% (7201)
PBR1.0
PER8.3
みずほFH
3.6% (8411)
PBR1.0
PER8.8

※上記銘柄が上記基準に完全に該当する訳ではないものとする。

その2 個別銘柄のゾーン設定

指標等により投資対象の銘柄を選定、期間は成長性や市場の変化もあるので個別株により異なるが、おおむね5年から10年間で株価の長期波動を測定し、目標銘柄の上値・下値を変動ゾーンに設定する。
原則としてゾーン下方に株価があるときを投資開始時期とる。

その3 売り時買い時の設定(信用取引の利用)

行動経済学で“プロスペクト理論”と呼ばれている〔不確実性下における意思決定モデル〕をご存じだろうか。
その内容を投資行動にあらわすならば、普通の投資家(=一般的な心理)は、利益期待願望より損失回避恐怖の方が大きいということを示すものだ。

具体的な例でいうと、仮に1,000円で購入した株が1,050円まで上昇すると、50円(5%)の利益であり、①1,050円で利益確定する ②保有継続で大きな利益を目指すか、の二択になる。
この場合、株価下落リスクで確定できる利益50円よりも利益確定、すなわち②よりも①を選択する投資家の方が多い傾向にある。

逆に、同じ株が800円まで下落すると200円の損失だが、この場合にはさらに下がると損失が拡大するにもかかわらず、早めに売却して損失確定することを嫌う傾向が強い。
これが株の格言で言う “素人の早い利食い、遅い損切り” である。
とは言え、期待以上の相場上昇時点で早めの利食いをしない選択や、暴落相場で、早めに損切りするのは難しい。

信用取引を併用した投資

下限ゾーン(相場低迷時)にバリュー株が購入出来た場合

安値圏で目的の銘柄を購入できた場合は、運用方法は比較的単純だ。
該当銘柄の上下のゾーンの一定割合をターゲットにして、例えば安値ゾーンである買値からゾーンの上限(仮に30%)に上昇したら、保有株相当額の信用売りを実施する。
その後、ゾーンの半ば(15%)まで下落、または信用期日に、反対売買して収益を確定する。
反転上昇した場合は、同様の信用売りを反復する。レンジ内で何度か上下動があれば、収益は大きくなる。

仮に信用期日までに売り価格を越えていた場合は現渡しを行い、売却益(上記場合は保有額の30%)を確定する。
この方法が成り立つ前提は、購入価格からの下落がないことだ。不安であれば、購入資金の一部を留保し、相場環境要因等でゾーンを超える下落のために難平買い用の資金を残しても良いだろう。

相場上昇時のバリュー株購入

なかなか底値で優良株を購入するのは難しい。そこで全体相場反転後、ある程度ゾーン下限から上昇している銘柄(バリュー株)を購入した場合の、値下がりリスクを低減する投資方法の一例を下記に例示した。

1.年間配当利回り3%の株式を購入する。
2.同時に購入額の1/3を信用売りする。
3.信用期日まで株価が変動しなかった場合、反対決済し年間利回り換算で2%の収益を得る。
4.株価が3%(利回り)以上に上昇した場合、買値+3%以上(任意)で購入額の1/3の額の株式を売却。
5.同時に、信用売りの建て玉を反対売買で清算する。(年間益回り5.8%)
6.株価が3%(利回り)以下の値下がりとなった場合、信用売りの建て玉を反対売買で清算する。(年間益回り7.8%)

この方法をとった場合、株価上昇時には収益が信用売りの無い場合より低くなるが、株価下落時にも収益が得られる。
選定銘柄が、購入時の想定通りに下落後の相場反転で回復するのであれば、信用売りによる収益がそのまま残り、保有利回りを上回る益回りが得られることになる。
また相場上昇時の精算タイミングについては、プロスペクト理論によれば「信用売りの損失額」拡大の見切りタイミングが通常の売りタイミングより遅れることにより、収益が拡大する事となる。

信用取引シミュレーション

※配当利回り3%の場合

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暴落で儲けられるのはプロ投資家

相場が大幅変動する時期や騰落幅の予測は難しいが、経験則から考えても上昇相場は反転する時期が来ることは容易に予想される。

提示した信用取引例は、こうした「予測が難しい反落」に対応する手段の一つとして、購入資金の一部を下落リスクヘッジにあてる一つの方法であり、暴落相場で収益を上げることは目的ではない。
大口ヘッジファンド等の専門家を除けば、下落相場で収益を期待することは難しい。プロ投資家でさえも失敗することがあるのは、最近のヘッジファンドの破綻例などから見ても明らかだ。

相場の騰落に関わらず利益が上がる方法があれば、その反対側に必ず損失が発生しており、そうした取り組みは投機であって投資ではない。相場格言でも「休むのも相場」と言うように、下落相場でも収益を上げ続けようとして失敗する場合は多い。

資金運用の最終目的は長期投資と安定収益

ここでは長期運用を前提とした投資方法として、暴落にも対応しながら収益も狙える一つの方法を示す。もちろん、この他にも数多くのリスクヘッジ手段や収益獲得方法があることは言うまでもない。

暴落を怖れて収益機会を失うよりは、リスクヘッジを行いながら上昇相場にも付き合っていくことが、長期的な資金パフォーマンス向上に繋がるだろう。
但し、短期での値幅取りで継続的に相場平均を上回ることは難しい。運用期間内通算利回りを意識した継続的投資スタンスが、長期的には一番確実な投資方法だと考えている。

≪信用取引併用の売買パフォーマンス事例)≫ コラム筆者の投資実績を参考に記述

※1 「底値ゾーンでのバリュー株購入」の信用売り併用方式のパフォーマンスは、約25年間で年間3%~29%、期間平均で14%の収益(株主優待相当額含む)となった。 全体相場下落時、保有株はいわゆる塩漬状態で実現損の発生はない。
※2 「相場上昇時のバリュー株購入」のパターンでの投資は、運用資産規模が増加した4年前から開始し、昨年まで年間7~12%の収益(平均で9%の収益)

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。