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イノベーションは宇宙から「スピンオフ製品」の未来

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出典:jaxa.jp

最近の技術分野においての経済ニュースでは、AI・ロボット・フィンテック・ビットコイン等への注目度が高い。しかし、経済や産業にイノベーションを生む分野として、医療・製薬を含む「生命科学分野」と広い意味での「宇宙産業分野」の二つも忘れてはならないだろう。
その中で、宇宙開発技術から生まれたスピンオフ製品について、過去の実績紹介から未来経済を担う可能性の一端を探ってみた。

既に身近なスピンオフ製品

スピンオフとは、副産物(派生物)を意味する英単語であり、特定の分野が開発した技術を別の需要に転用するという意味である。スピンオフ製品は、宇宙開発関連の技術を転用して生産された製品が最も多い。他には軍事研究からのスピンオフ製品もある。

宇宙開発由来のスピンオフは、当初はNASA(アメリカ航空宇宙局)の製品がほとんどだった。しかし、最近では日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)によるスピンオフ製品も目立ってきた。
NASAは、過去50年の間に2,000を越えるスピンオフ製品を生み出してきた。その中には意外に身近な製品が数多く存在している。

これまでのスピンオフ事例

NASAからのスピンオフ事例は、60年前に発売された粉末ジュース以来、フリーズドライ食品やクォーツ時計、ヴェルクロテープ、ラジアルタイヤなど我々の身の回りに多く溢れている。
スピンオフの数々を、JAXAが紹介するユニークな事例と合わせて紹介する。

資生堂は、スペースシャトル内で向井千秋宇宙飛行士が育てたバラの香りを再現した香水「資生堂ZEN」を発売、その名も “スペースローズ” を配合したロマン溢れる商品だ。


宇宙科学研究所の三浦教授による “ミウラ折り” は、日本伝統の折紙をヒントにコンパクトに折り畳んだ太陽電池パネルを宇宙空間でスムーズに展開するために考案されたものだが、折り畳み地図や路線図として実用化されている。

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出典:mido-ri.net


NASA勤務の日本人研究者らが研究開発した耐圧円筒構造を利用して、ダイヤ型の格子模様のある缶チューハイ、キリン「氷結」缶が出来上がった。

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出典:rocket.jaxa.jp
www.miuraori.biz

 

この他にも、ロケット点火技術を利用した自動車用エアバックの衝撃展開技術やロケットの振動制御用に開発された積層ゴムから生まれた、ビル建築の基礎に利用が増えている免震積層ゴムもNASAによる技術だ。
また、国際宇宙ステーションなどでの長期間の宇宙滞在に向けて開発された船内廃棄物のリサイクル技術は、家畜糞尿再利用システム等に利用が始まっている。

医療分野でも国際宇宙ステーション搭載カメラからのカプセル型内視鏡(胃カメラ等)は現場から高い評価を得ているそうだ。
身近なものでは、NASA開発のクッション材や温度調節素材を使った「地球NASAランドセル」がある。また、宇宙船内でのクッション用に開発されたテンピュール素材は枕に使われて有名になった。

この他にもGPS時計や、iPadアプリなどのソフトウェア技術にも多くのスピンオフ製品があり、広範囲に利用が広がってきたスピンオフ技術は様々な分野で役立っている。

これから期待されるスピンオフ

今後のスピンオフ技術として特に注目したいのが、最先端技術への展開だ。
急速に発展する先端技術分野では、基礎研究が実用に追いつかない部分があり、それを補う役割が宇宙からのスピンオフに期待される分野だ。

太陽フレアによるコンピュータダウン対策

その一例として、NASAが開発した宇宙線防護機能の高い半導体(エラー発生率が低いメモリー等)がある。民生用については未だ実用化に向けて研究中だが、これは太陽フレア対策にもなるのではないかと期待されている。

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出典:afpbb.com


カナダのケベック州の大停電(1989年)は、太陽表面の爆発「太陽フレア」により起こった。太陽フレアによる強大なX線などの宇宙線が、送電設備だけでなく、衛星通信や株式市場のコンピューターもストップさせたのだ。
当時はこうした太陽フレアの被害は限定的だったが、ウェブでつながっている今の世界では比べものならない甚大な影響が出るだろう。

コンピューターメモリー等は異常に強い宇宙線で破壊されるか誤動作を起こし、航法が電子化された航空機の墜落事故が発生し、あらゆる電子機器のダウンにより世界中のコンピューターの停止やウェブ上の全データが吹き飛ぶ事態が憂慮されている。
各方面での対策案に太陽フレアの規模や頻度自体が未だ解明されておらず、十分な対応が出来ていないのが現状だ。
この対策に、より宇宙線防護機能の高い半導体をリーズナブルなコストでコンピューター等の基幹部品に組み込むことが出来るようになれば、今後急速に太陽フレア・宇宙線防護対策が進展するだろう。

自動機器運転への利用

ロケット技術者が天体の軌道計算に使ったプログラムの応用は、既に実用されている。こうした技術はAI技術への応用により、様々な機器の自動運転の精度向上につながりそうだ。
日本のはやぶさの小惑星着陸で示された誘導技術は、驚異的な技術として世界を驚かせたが、JAXAは他にも金星探査などで大きな成果を生んでいる。JAXAの遠隔操作、人工知能の制御技術等は、意外に早く民生分野で実用化されるかもしれない。

gigazine.net

forbesjapan.com

これからもスピンオフは注目技術だ

宇宙からの技術と言っても、開発段階で予想もされなかったスピンオフ応用事例が数多く実用化されており、今後もこうした事例は続くだろう。
民間宇宙旅行、火星探査計画やはやぶさ2のニュースで、宇宙開発への関心が高まっているが、これからもスピンオフを通じて、目立たない身の回りの意外な技術革新・イノベーションが起こるだろう。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。