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金融界で注目のAI投信と物流REITの将来性を探る

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最近、AI(=人工知能)が運用判断する投資信託商品の販売が好調だ。自己学習をしながら成長し、資産等の運用判断を行うという新商品の人気が高い。
一方で、ネット通販等の拡大で急成長中の物流センター特化型の不動産REIT「物流REIT」の上場が続いている。この二つの金融商品について、その分野の可能性、金融商品としての将来性を探ってみたい。

AIが運用する投資信託

AI投信と言っても、AI開発や生産関連の企業等に投資する投資信託ではない、文字度通りAI(=人工知能)が運用判断を行う投信商品だ。

三菱UFJ信託銀行が2017年2月から発売した、AI日本株式オープン「愛称:日本AI(あい)」は、設定・運用会社の三菱UFJ国際投信の販売資料によると、日本国内株式及び株価指数先物の取引を行うものである。

投資信託の仕組みとしては通常の株式投資信託と大きな違いはない。
大きく異なる点は、ディープ・ラーニングを駆使した最新のAI技術により運用を行い、投資商品のパフォーマンスを決めるという点だ。
具体的な運用方法自体は、株式購入の銘柄選択と指数先物を利用した売りの組合わせにより、市場平均を上回る成績を上げることを目的としている。
この商品は、2016年に「自己学習するAIが2009年3月から実際に運用した場合」のシミュレーションとしたバックテストを行った結果、全体として株式市場平均を上回る良好な運用が達成出来たことから販売された。


AI運用の投信等は、投信を資産運用の主体とする個人投資家に人気となり、野村アセットマネジメントの「野村グローバルAI関連株式ファンド」は2営業日で約1,500億円を集めて話題になった。

三井住友アセットマネジメントが昨年から運用を始めた「グローバルAIファンド」は累計約2,500億円、同じく「ニッセイAI関連株式ファンド」も累計約500億円の資金を集めたと報道されている。
ファンドラップ型のAI投信も増加傾向で、いわゆるロボアドバイザー投信には下表の投信の様にそれぞれユニークな特徴があり、注目されている。

取り扱い会社
サービス名
投資対象
手数料(年率・税別)
信託報酬
備考
お金のデザイン THEO ETF 1%(3000万円未満。以上は0.5%) 対象ETFの報酬 2013年8月創立。 86力国、1万1干銘柄以上に分散投資
松井証券 投信工房 投信 無料 0.392% 「手数料無料」のコミカルなTVCMが話題
ウェルスナビ WealthNavi ETF 1%(3,000万円超は0.5%) 対象ETFの報酬 マッキンゼー出身の柴山和久氏が2015年4月に創業
マネックス証券 MSV LIFE ETF 無料(10万円以上は、0.88%) 0.24% 目標金額や期間を基にポートフォリオ策定
楽天証券 楽ラップ 投信 0.702%(1,000万円以下) 最大0.288% 投資信託 10万円合計手数料1%未満で業界最低水準

ディープ・ラーニングとは

ディープ・ラーニングを行うAIは、グーグルが画像データの整理に利用したということで注目されているが、人口知能が自己学習を重ねて進化するという概念自体は、以前にIBMの「ワトソン」が開発され、一定の成果を上げている。

しかし最近のAIには、学習対象の特徴をデータから自動的に抽出する表現学習と呼ばれる機能が強化されている。
従来型AIの学習は、人間がAIに注目すべき特徴や差異シグナルを予め与えていたのだが、現在のディープ・ラーニングは、膨大な対象データを照合し、得られた結果を検証・フィードバックする循環的なプロセスにおいて学習を重ねる。
さらにその学習過程のパフォーマンスを参照して学習方法自体もAI自身が更新するのだ。一時代前のスーパーコンピューターでは処理不可能な大量データを高速で読み取り、瞬時に分析する高度なAI能力により可能になった技術だ。

例えば将棋のAIがプロ棋士に勝利できるようになったのも、過去の棋譜データからプロ棋士も知らなかった一定の駒配置パターンを抽出し、実践に利用するように学習したからだ。
囲碁の場合も少し内容は違うが、AIが人間のプログラム手順等に頼らず、自己学習システムを使ってトッププロに勝てるような進化をした点は、同じくディープラーニングの成果である。

このディープ・ラーニングを駆使したAIが、実際に投資専門家を大きく上回るパフォーマンスを上げ続けるかどうかは現時点では未知数だ。しかし、今も驚異的なスピードで進化を続けるAIが、今後より優れた投資判断が出来るようになる可能性は否定できず、将来性は有望だろう。

tjo.hatenablog.com
tadaoyamaoka.hatenablog.com

物流REITの上場増加

次に、物流REIT(リート)について見てみよう。
物流(物流施設特化型)REITは、資材倉庫や通販会社の配送センターなど主に物流施設への投資を行う不動産投資法人で、最近まで「日本ロジスティクスファンド投資法人」が実質的に唯一物流施設が保有資産の9割を越えるREITであった。

しかし、2012年以降に物流特化型のJ-REITが増加し、2016年上場の2銘柄を加え東証上場REIT銘柄数の約1割を占めるまでになり、注目を集めている。

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出典:mitsui.com

物流REITの最近5年度間の利回りは、他のREITを上回るパフォーマンスを残しているようだ。【インプライド・キャップレート除く、上場銘柄平均】

従来型の物流施設は長期固定賃料契約が多いため収支は安定的で、新規に資産追加するケースが他の不動産REITに比べると比較的少なかったが、最近は最新先端設備導入のテナント型物流施設が拡大傾向にあるのも人気の原因の一つだろう。
背景には、最近のネット通販の好調さと取り扱い件数の急拡大による少量多品数配送のニーズが短期間で拡大したことと、Amazonの当日配送など物販会社間のサービス競争激化による配送時間短縮の要請により、新規の先進的施設による効率的物流体制が必須となってきたことがある。

更に、この物流REITには利益超過分配金の採用が多く、投資家には短期的な収益も期待できる。不動産投資法人における資本払戻(減価償却資産)に相当する分配金(OPD)で、通常の利益を原資とする分配金のほかにこのOPDを分配金の一部として支払うケースが多いのだ。

一般的には減価償却資産にかかる費用は不動産の修繕・改修等に充当するもので配当には適しないのだが、物流施設は一般オフィスビルよりは修繕費用が少ないことから、こうした取り扱いの採用ケースが多い。物流REITは、一般不動産より修繕引当金の必要額が少ないため手元資金の金銭配当が出来る訳だ。

物流REITが注目される理由

最新の物流REITは、こうした手元資金や上場で得た資金を原資に、積極的な先端物流施設への再投資を行っているケースが多くなっているようだ。老舗の日本ロジスティクスファンド投資法人も再投資で資産を着実に増加させているが、2012年に上場した三井不動産ロジスティクスパーク(3471)は、三大都市圏を中心に5棟建設という積極的な事業拡大計画を発表している。

こうした動きは、前述の物流事業に対する施設の量的拡大と先進・先端設備による資材回転の効率向上が強く要請されているからだと思われる。昨今の宅配サービスを含む消費者ニーズの増加を考えると、当面こうした資産の積極運用姿勢の傾向は続くだろう。

さらに、PM会社(Property Management会社)の不動産投資における所有と経営の分離の考え方が、物流REITにおいても物件取得から保有物件に至る管理プロセスで運用物件としてのパフォーマンスの向上に物件取得の段階から導入される傾向もある。経済の活性化の観点からも今後の物流REITの成長に期待したい。

AI投信と物流REITにおける今後の課題

AI投信に関しては、運用技術の向上だけではなく、想定外の海外要因等による極端な相場変動時に発生する恐れのある運用資金の大量流出・流入にどのような対応ができるのかが今後の注目点だ。
これに関しては、AIの能力向上に加えて複雑な市場取引に関する過去・現在のビッグデータがどこまで包括的に利用できるかどうかもカギになりそうだ。

また物流REITでは、ドローン実用化と関連施設建設や物流関係のICT対応を含む関連法規制の見直し、ドローン等の利用拡大などのための技術開発・制度設計や標準化などに向けた動きが活発化している。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、物流、インフラ点検、災害対応などで活躍が期待できるロボットやドローンの普及を加速させるための新たな研究開発を進め、ロボット・ドローンの性能評価基準等の研究開発や無人航空機の運航管理システムおよび衝突回避技術の開発、ロボット・ドローンに関する国際標準化推進なども行い始めた。
無人機運航管理システム開発にはNEC(6701)NTTデータ(9613)楽天(4755)等も参加し、サービス実現のため運航管理システムの研究開発を進めている。

www.nedo.go.jp


ドローン物流の課題克服のため、ドローンに最適化された専用空域(空の道)制定で事業者が専用空域を利用可能な法整備等も求められている。
また、この他にも物流施設の建設単価高騰や用地手当てなどの問題もあり、現在の積極拡大姿勢継続への問題点は残る。
これらの課題解決は、流通にかかる人手不足を含む物流全体の問題として今後の進展に注視が必要だ。
いずれにしても多くの可能性を期待させる、AI投信と物流REATの今後の展開からはこれからも目が離せない。

 

後序:将棋AIについて

将棋の天才中学生プロ棋士の連勝記録が話題になっているが、昨年のプロ転向前後の飛躍的な実力向上はコンピュータ将棋ソフトの研究によると言われている。
事実、この藤井四段の連勝記録中の将棋の指し手には既存のプロ棋士には意想外の指し手が時折見られ、観戦中のベテラン棋士から驚きの声が聞かれることが多い。

過去の定石にとらわれない意外な着手・斬新な構想から、序盤で優勢を築いてしまう対局も多く、対局後の藤井四段の感想を聞くと、その指し手は深い読みに裏付けられていたことが良く分かる。
このことは、トップ棋士にも勝利するようになった将棋ソフト(AI)の能力が単純に人間の能力を上回っただけではないことを示唆しているのかも知れない。

もちろんAIは人間に比べはるかに高速の演算能力により深い読みを行い、無尽蔵の記憶力で過去の対局例を参照できるのだが、それだけではなく「形成判断」や「指し手」「駒の損得」の状況判断(価値の捉え方)が、従来のプロ棋士の考えとは異なっているようだ。

実際の所、AIソフトの判断の源泉や仕組みの由来は、作成者にもわからない部分があり解明の半ばだ。
だが、先述の藤井四段が詰め将棋(将棋の最終局面)の力では、アマチュア時代からトッププロレベルなのに、プロ入り直前でも前半で敗勢になり勝てなかったこともあった。
ところが、昨年から始めた将棋ソフトの研究以来、プロ公式戦で記録的な連勝という結果を残しているのは、天才的な若い頭脳に加え、将棋ソフトの思考法やその手法の一部を取り入れたからではないだろうか?

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。