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Money Clip

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トランプノミクスで為替はどう動くか

経済 為替
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出典:toyokeizai.net

トランプ大統領が次々に打ち出す大統領令の注目が集まっているが、新政権の経済政策、いわゆる“トランプノミクス” の具体策はまだ少ない。

トランプ新政権の経済政策は、不透明要素が多く米国経済がどう変わってゆくかという全体像が見えない。トランプノミクスは、よく比較されるレーガン政権のレーガノミクスに対し、現段階では経済分野の選挙公約列挙に過ぎないと感じる向きも多いようだ。

トランプノミクスが今後どのように具体化し、世界経済への影響はどうなるのか?
ここでは、為替相場、特にドル/円レートの今後の推移予測と絡めて、これからの展開を考えてみたい。

レンジ内での動きを続けるドル/円

ドル/円の直近一年間のチャートを見ると、約20円の値幅がある。これに対し、年初から一ケ月の変動幅は、112円と117円の間、おおむね5円程度のレンジ内にとどまっている。
トランプ大統領関連の報道と、それに呼応して目まぐるしく変動する為替相場だが、確かに乱高下は繰り返しているものの、極端に大きな幅の動きではなく現状はレンジ内の動きとみるべきだろう。

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出典:t2.jiji.com

ドル/円レートの変動要素

では、この動きはどのような要因でもたらされるのだろうか。
下記に、ウェブや各種コラム、メディア等にあらわれる主な事項を将来的な要因も併せて列挙してみる。

円高(ドル安)要因

円安牽制発言(トランプ大統領等の円安誘導国批判)、貿易収支(6年ぶりの日本の貿易収支黒字化・直近の米貿易収支悪化傾向)、日銀の金融緩和策転換(マネーーサプライ減少=量的緩和策の限界)、リスクオフの円買い → EU不安(仏選挙等)、原油安(中東の経済悪化)、ISテロなどによる中東情勢の悪化、中国経済・世界経済の減速や混乱)、大統領令への反対運動等の米政治混乱・政策不透明懸念

gendai.ismedia.jp

円安(ドル高)要因

日米金利差の拡大、トランプノミクスへの期待→インフラ投資1兆ドル等の財政支出、減税、規制緩和、国境課税、対外投資米国内還元、GDP4%成長・保護貿易の進展・米経済好調にともなうインフレ → 利上げの継続、リスクオンの円売り→中国経済の再上昇、世界経済指標の好転等

以上の項目以外に、両方向への可能性がある動因として大方の市場予想と逆方向に動くことのある投機筋(海外ヘッジファンド等)の仕掛けもある。
さらに為替動因とは断言できないが、二つの逆方向アノマリー(新大統領誕生後のドル高、末尾7の年は経済混乱等)も取りざたされている。
それでは、これらの事項の主なものについて、さらに詳しく検討してみよう。

政治的要因について

トランプ大統領や関係者の円安牽制発言は、日本との二国間協議では議題となるのだろうが、最近の為替市場の限定的・抑制的な反応から見ても大きな為替トレンドを反転させる力を、これからも発揮できるかどうかには疑問が出てきた。

勿論、トランプ大統領が意図的にトランプノミクス遂行のスケープゴートとして、日本に対して(防衛負担等の)予想外の強引な要求等をすれば、それ自体が政治的混乱要素ともなり、一気に円高を生みかねない危険性はある。
当面は日米首脳の動きから目が離せないだろう。

経済的要因について

昨年(2016年)の通関統計による貿易黒字は約4兆円だが、米国に対する貿易黒字は7兆円弱で、日本の黒字額は米国貿易によるものと言える。さらに、対米貿易黒字の約7割が自動車貿易によるものだ。トランプノミクスの標的になることは理解できる。
だが、この日米貿易不均衡以外の経済的要因は、最近の米国経済の強さや今後予想される減税、インフラ投資等の経済施策、利上げ等、ドル高要因となる事項が多い。
特に、米国の利上げは日米金利差拡大によるドル高を招く。利上げは為替変動に大きなウエイトを占める要因だ。

最近の日米金利差を見てみよう。金利差の指標として重要な米国10年債利回りは、米大統領選直後の2.3%水準から2.6%を越える水準まで急上昇し、その後はレンジ内の動きを繰り返している。一方、日本の10年国債金利は、上昇傾向にはあるが、同じ期間内で0.1%の小さな動きであり、実質的には米国金利水準が日米金利差を決定している。
金利差に絞って為替動向を考えた場合、仮に米国金利が、2.3%を割り込むか、あるいは2.7%を越えて上昇する動きを見せれば、為替相場も最近のレンジを離れて大きく動く可能性が高いが、2月のFRB(米連邦準備制度理事会)の政策現状維持を受け、当面、次回利上げが現実化するまでは大きくは動き難い情勢だろう。

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出典:jp.investing.com

米国経済政策への期待

現段階で新政権の経済施策について、具体案はほとんど発表されていない。
(トランプ新政権は、議会承認が必要な事項を先送りにしているのかも知れない。)
大統領が選挙公約に掲げた減税や財政政策の具体策は、その内容次第では、大きな為替変動要因になる。
だが、現時点ではまだ大きな為替変動要因にはなっていない。
前掲した財政支出、減税、規制緩和、保護貿易(国境課税)等が議会承認を経て、具体化すれば、経済要因としてはいずれも円安/ドル高要因となるものばかりだ。

今後の為替動向はどうなる

改めて今後の為替相場、ドル/円レートの推移予測を整理すると、現時点で明らかな日米金利差等からは円安/ドル高方向へのベクトルが強く、口先介入等の政治的要素は逆方向の要素が強い。

今後、選挙公約通りにトランプノミクスの経済政策が実現すれば、円安/ドル高方向のベクトルが強化され、逆に想定外の国際政治情勢不安が発生・拡大すれば、リスクオフの円高/ドル安に動くと予想される。
以上は、今年から来年前半までの展望だ。

中長期の視点には、トランプノミクスの後に来る経済変動(インフレ加速、米国景気拡大の終了等)も考慮する必要がある。また、我が国の成長戦略も関連する。もし、日本経済がはっきり失速すれば、極端な円高或いは円安に為替は振れるだろう。

これらは本稿の論点ではなく詳論は避けるが、日本の持続的な経済成長には、大胆な「規制緩和」は欠かせない。トランプノミクスだけに「規制緩和」を任せていると、東京オリンピック後に日本経済が息切れするのは免れないと筆者は考えている。

このように、将来の為替変動要素は複雑で予測は困難だが、いずれにしてもトランプ大統領のこれまでの発言と政策については、矛盾や不透明部分が多く、引き続き注視が必要であることは間違いない。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。