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人材紹介業の多様化傾向から見える、これからの就職事情

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1997年のILO181号条約を機に、民間職業紹介事業者の規制が緩和され、伝統的な求人企業からの希望を元に人材サーチを行う、いわゆる“サーチ型紹介会社”から「求人・求職」両者の結合を行う形態の事業者が増加しつつある。

最近、求職者の希望を重視し、企業とのマッチングを行うこうした登録型の人材紹介業に、事業形態の多様化の兆しが見られる。
この傾向から今後の就職事情がどのように変化してゆくかを考えてみたい。

人材紹介業の拡大

人材紹介業の市場規模は拡大を続けている。
2000年には約500億円だった人材事業者の売上高は、2010年には約900億円、2015年には1850億円、2017年度は2300億円と予測されており、右肩上がりの上昇傾向だ。

www.yano.co.jp

これに対し、人材派遣業の取り扱い数等を見てみよう。
厚生労働省発表資料による直近5年度の求人数は、5年間で110%以上の伸び、常用就職数は同じく34%も伸びている。

※尚、事業所数は約5%の伸びにとどまっている。事業所数は、2016年には17,893事業所で、昨年比3.4%増となった。だが、2008年は17,165だった事業所数が2011年には16,613事業所に落ち込み、再び増加しており全体として緩やかな増加であり、明確な増加傾向が続くかどうかは疑問だ。

www.mhlw.go.jp

この背景には、企業の年功序列賃金の見直し傾向や終身雇用制の減少等に伴う転職割合の増加や、非正規雇用労働者の増加、少子化に伴う若年労働者の減少など様々な要因が絡み合っている。
そのため、今後の推移を占うのは難しいが、求人難が深刻化しつつある中で、人材紹介会社へのニーズか高まっていることは間違いないだろう。

人材紹介と転職エージェント

全国には1万8千近くの人材紹介事業所がある。複数の事務所を持つ大手事業所もあり、実際の事業法人数はこれを下回るが、それでも同じく2016年の統計による有料職業紹介による就職者数(常用)は518,328件だった。
※人材紹介事業者団体である一般社団法人日本人材紹介事業協会の会員数は230社

冒頭に述べた登録型の人材紹介に分類される「転職エージェント」は、登録料はもちろん、就職した場合でも求職者の費用負担はなく、紹介事業者は紹介企業から報酬を受け取る仕組みだ。
※求職者と1対1での対応を行う、転職エージェントと、ウェブサイトだけで応募から就職まで完結させる「転職サイト」は全く別の人材紹介の形態。

業界の関係者の話によると、最近、この転職エージェントの業容が多様化しているらしい。
残念ながら、現時点では、転職エージェント数の推移を統計数値から確認するのは難しく、このいわゆる「職種細分型転職エージェント」数増加の背景を確認するのも困難だが、ウェブで募集を続ける事業者名からみても、増加傾向はある程度推測できる。

例えば、介護関係の転職サイトは35以上、保育士関係も同様で、更に薬剤師関係のサイトは80以上も存在している。
これに加え、大手のDODAやリクルートなども、専用サイトなどで、同様の取り組みを行っているので、これら人気職種(経常的に求人が多い)の求職者には非常に多くの選択肢が提供され始めたというのが、先述した関係者の話だ。

介護業界の人材不足は大きな社会問題となっており、10年後には約38万人の介護職が不足するのではないかと観測されている。介護士の争奪戦はかなり激しくなっているようだ。
保育士についても厚生労働省の統計によると全国平均で2倍近くの求人倍率で、特に首都圏では更に厳しい不足感がある。
また、薬剤師は転職の多い業種で、複数回の転職を行う薬剤師が近年更に増加傾向だ。
これは、2006年以降の大学在籍期間の6年への移行や、2009年からドラッグストア等の店舗販売業の第一類医薬品販売に、薬剤師常駐が義務化された事など、いくつかの法改正の影響に加え、最近は、ネットでの転職情報取得が容易になったことが理由と言われている。

これら社会要因による求職者・求人企業の変化が、従来の人材紹介事業の仕組みに変化をもたらし、業種別転職エージェントの増加につながった様だ。

boxil.jp

転職エージェントの手厚いサポート

実際に、こうした転職エージェントとハローワークなどの従来型人材紹介との違いは、求職者への手厚い、行き届いたサポート体制の提供にある。
その主なものを下記にあげた。
•希望転職会社等のリストアップ
•必要応募書類の抽出、書類作成サポート
•面接への段取り、面接時の応答指導

このような、求職者一人一人に原則として専門のコーディネーターが、就業までの過程を継続してサポートする転職エージェントの比重が、人手不足の職種を中心に広がっている。

これからの就職・転職事情

こうしたきめ細かいサポート体制はまだ一部の業種、職種に限られているが、今後の日本における人手不足は、少子化の進行、団塊世代の完全リタイアを背景に、急速に深刻なものとなっていくだろう。
そうした中で、必要な人材を企業が確保するためには、従来以上のコストを覚悟して、自社の募集体制を拡大するか、あるいは前述の専門的な事業者を利用した採用(一人当たりの採用コストは定額だが、従来型よりは高採用コスト)を迫られるだろう。
既に、その兆しが一部専門職種等で広がっている職種細分型人材紹介の増加に見られることをこれまで見てきた。

近い将来、日本の企業は求職者絶対数の減少による深刻な人手不足に加え、業種によっては採用手段の高コスト化により、事業の現状維持をするだけでもかなりの採用コスト、人件費増を覚悟する必要がありそうだ。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。