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Money Clip

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IDeCo (個人型確定拠出年金)加入の得失を考える

税金 資産運用
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出典:npfa.or.jp

IDeCo(個人型確定拠出年金)は、2017年から、制度の加入対象が公務員や一般サラリーマンまで拡大するなど、大幅な制度改善が施行されたため、にわかに関心が高まった。

そのため、一般にIDeCoについての関心は非常に高く、税控除等の制度加入メリットや、利回り比較、手数料比較、利用方法等が注目されている。

IDeCoは、後述するように、加入時点から原則60歳まで資金を囲い込まれた柔軟性の少ない資金運用手段という側面を持つ。

長期間固定の特殊な資金運用手段として、他の個人年金積立や一般の資金運用手段との比較を行い、将来的な経済リスク、資金運用効率等の検討を踏まえた加入自体の是非も含めた判断が必要なのだ。

IDeCoの税優遇メリットが他の手段に比べ格段に大きいためか、長期的観点を前提とした視点が比較的少ない。そのため、ここではIDeCo加入の得失を長期間運用の側面を中心に検討する。

IDeCoとはどのような制度か

1 原則60歳以降に給付金又は一時金を受取る。(中途換金は原則不可)
2 掛金は所得控除され、所得税等が軽減される。(税制上の優遇措置)
3 離・転職した場合、積立年金資産を持ち運べる。
4 毎月の積立額、運用商品の種類、配分等は自分で決める。
5 維持手数料、運営管理機関、事務委託先金融機関の手数料等が必要。

抜粋:個人型確定拠出年金|個人型確定拠出年金

IDeCoのメリット・デメリット

メリット

■税制上の優遇措置。(例えば、25歳加入で、60歳迄の平均年収500万円、掛け金が3万円/毎月、計35年間の場合、合計1260万円が所得控除され、結果として約250万円の節税メリットが見込まれる。これがIDeCo最大のメリットだ。)
※表2参照
■投資商品の分配金等の運用益も非課税。(上記条件で、東証一部平均配当利回1.7%で運用すると、35年複利で、約100万円の配当所得税優遇メリットが期待できる)
■IDeCoは、払込資産が個人資産として保証されるので、年金団体破綻等による給付水準引下リスクがない。
■離転職時のポータビリティが保証されている。
■個人で掛金額、対象運用商品等を設定出来る。

デメリット

■商品により総支払額より給付総額が減るリスクがある。
■加入者が内容を個別に検討できるように、投資可能商品種類が抑制されている。
■60歳迄、長期間現金化が出来ないため、積立期間内に大きな経済変動等が起こった場合のリスクに対応出来るする選択肢が少ない。
(資産を現金化して、金地金や不動産等に移すことは出来ず、大幅インフレによる資産価値減少が予測されても、対策が難しい。)
■口座開設時や、維持に複数の手数料がかかる。※表1参照
一定の口座残高がないと税軽減メリットが少額で、手数料負担の方が大きくなる場合がある。

表1 IDeCoの利用手数料
加入時・移換時の手数料
口座維持手数料
支払先
金額(税込)
支払先
金額(税込月額)

国民年金基金連合会

2,777円

国民年金基金連合会

103円

委託金融機関

0円~1,200円程度

委託金融機関等

64円+α

合  計

2,777円~4,000円程度

合計(12か月)

2,000円~8,000円程度

*この他、運営管理機関変更時にも手数料が発生する。

委託(運用)期間から考えるIDeCoのメリット・デメリット

IDeCo最大のメリットである税優遇措置は、利用(積立期間)が長いほど受けるメリットが大きい。
60歳まで原則換金不可なので、税優遇措置を充分受けるためにも、長期間の資金運用が望ましい。

一方で、長期固定運用による資産価値減少リスクが大きい。
運用期間内に適宜、運用商品や資金配分を変更すれば、インフレや為替変動等の経済リスクには対応可能で、長期運用リスクとはならないが、1970年代初めのような急激かつ大規模な経済リスクについて、個人が柔軟かつ適切に対応するのは困難で、リスク回避は難しい。
 
税優遇メリットが大きい高額所得者や、年金受給までの期間が短い世代には、こうした長期運用デメリットは比較的少ない。
だが、数十年後の受給を期待する若年者は、利用開始前に、受給開始迄の長い期間内に起こりうる経済変動・経済リスクと、税優遇等のメリットを天秤にかけて、投資する掛金額や投資対象について充分な吟味が必要だ。

長期の運用期間は運用益も加算した累計節税期待額を試算する

「メリット」の項目で取り上げた事例を例として考えてみよう。
月3万円のIDeCo累積投資額は35年で累計1260万円になり、積立資金から得られる運用益は約450万円となる。この運用益への課税免除による節税メリット額は約100万円だ。
これに先述した所得税等の税優遇メリット額250万円を加えると、IDeCoのメリット総額は、約350万円となる。(最終資金残高は約1700万円)

表2 IDeCo税優遇シミュレーション(3万円/月、年利1.7%複利運用)
所得税等の優遇額(35年間)
運用益にかかる税優遇額

総所得

17,500万円

運用益総額

4,425千円

累計所得控除額

1,260万円

課税額(20%)

約1,025千円

節税額

約250万円

税優遇額(課税免除)

約1,025千円

*IDeCoによる優遇(免除)税額合計=約350万円

年金受給開始時点で、約2000万円(節税分約250万円も加算)が、IDeCoの生んだ成果だ。

長期積立には、累計節税効果と積立掛金額とのバランスが重要

例示した2000万円という金額を、1970年代のインフレ時代に当てはめてみる。

当時の総合卸売物価は1973年に15.6%。翌年は31.4%に上昇し、同様に、賃上げ率は20%、33%と上昇し、大卒初任給は月約4万円から10年後には3倍の約12万円になった。
この10年間で、年金必要額が3倍になったとも考えられる訳だ。
もし同じことが、今後発生した場合、35年間積み上げた年金原資2000万円の価値は、(単純化すれば)700万円以下の値打ちにしかならない。

償還までのリスクは多い

今後、数十年間のスパンで考えた場合、日本でも過去に何回も発生したハイパーインフレが来ないという保証はない。

その場合に、自分の年金資金が随時現金化できれば、インフレ初動の時点で換金し、海外や金融商品以外の運用手段を選ぶことは可能だが、繰り返しになるが、IDeCoの資産は、60歳まで一切換金できない。

また全く別の話ではあるが、数十年の間には、知人の起業などの際に、まとまった資金さえあれば、共同事業が可能な場合もある。この場合のIDeCoへの資産集中による損失は、「収益機会の損失」となる。
そこまで特殊なケースでなくても、自分を含めた周囲の思わぬ医療費負担や地震等の災害による資産損失の際には、別途医療保険や損害保険の備えは(もちろんIDeCo加入の有無に関わらずだが)非常に重要かつ必須のリスクヘッジ手段だ。

IDeCoでも賢い投資の基本は、分散投資

紙幅の関係で割愛したが、資金運用商品には、国内のインフレに対応可能なものも存在するし、今後も様々な商品開発が行われるだろう。

IDeCoに多くのメリットがあることも間違いないので、加入に際しては、メリット、デメリット検討に加え、運用リスク運用商品の選択に十分な検討が必要だ。
ここまで、主に将来的なインフレリスクに警鐘を鳴らしたのだが、インフレ以外のリスク要因も考慮すると、IDeCoの場合でも、目先の利回りや運用コスト、元本保証だけにとらわれない柔軟な商品選択と、ハイリスク、ローリスクも含めた分散投資戦略が、将来の確かな年金受給には必要だろう。

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。