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プレミアムフライデー(Premium Friday)の経済影響

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出典:premium-friday.go.jp

平成29年2月24日金曜日に、第一回プレミアムフライデー(Premium Friday)が実施された。その後も実施継続されており、原則として月末の金曜日が対象日だ。
“月末金曜日は、ちょっと豊かに”というキャッチフレーズと金色のロゴマークでスタートしたこの取り組みには、どんな経済的影響があるのだろうか?

ここまでの実施の状況を検証し、今後の普及予測、売り上げ増等の効果、企業の取り組み成果や日本経済への波及効果などを考える。

プライムフライデーの消費喚起効果はどうか?

経済産業省は「プレミアムフライデー(Premium Friday)」として、毎月末金曜日(原則)の午後3時に退社し、ショッピングや外食、旅行などを楽しむ“豊かな金曜日”の享受を提唱した。
2017年度予算にも関連経費が計上され、上場企業を中心に民間企業への働きかけも続けている。
開始以来3回の実施により、プレミアムフライデーの認知率も上昇傾向にあり、特に大型連休前の4月28日が該当日となったことから、改めて話題になった。

例えば成田空港国際線の旅客数は前年同期比7.2%増の79万3100人、羽田空港国際線旅客ターミナルの旅客数が同15.1%増の45万3400人と大幅に増えた。成田からの出国者は1割近く増えており、帰国者のピーク5月7日に比べると出国者は4月28、29日の両日にほぼ等分されていることや、羽田の利用増等を考えると、色々な要因はあるがプレミアムフライデーによる利用増加もある程度あったようだ。

また小売業・飲食店等のサービス業は、この日は何らかの特別セールやプレミアム付与を発表している企業が多く、実際に通常の金曜日よりも予約や早めの来店で賑わう飲食店等も多かった。

「プレミアムフライデーで有給休暇が取得できたので、夜の早い両親と食事ができた」
「GW旅行で早出するため、早めの外食なら片付けも不要でうれしい」
「ターミナル駅から成田へのバスに乗る前に、家族で食事に来た」
「GW中は仕事だが、平日の今日に早帰りして、お得な割引セットが利用できた」


GW前の金曜日というのはカレンダー上の特殊効果かも知れないが、大型連休の消費効果に一定程度の寄与があったことは間違いなさそうだ。
更に新年度以降、法的措置も含めた有給休暇取得義務化の声が上がっており、先取りした形で休暇取得促進を進める企業も多くなっているようだ。
一方で、依然として好意的ではない否定的な意見も多い。

「月に一度3時から早帰りできたからと言って、外食やショッピングなんか出来ない。物を買うより早く帰って休みたい」
「月末実施というのが、官僚らしい非現実的な発想と思う。毎月末の金曜3時に社員が帰ったら中小企業のわが社は倒産だ!」
「プレミアムフライデーに対応出来るのは一部の大企業だけ、格差が更に広がるだけ」
「使うお金なんか無い。早帰りしても消費なんかしない」
「月末金曜早帰りの結果は、他の日に残業や更に過重な勤務が回るだけ」

www.j-cast.com


労働者感覚としては納得できる部分もあり、経産省の目論見通りの消費喚起には結びつくかどうかは今後の進め方次第という気もする。
祝日増加でもトータルの年間旅行支出増にはつながらなかった過去の旅行業界の経験も考え合わせると、月一回の時短で大きな経済効果が発生するかどうかは今の所未知数だ。

経済のマイナス面として、時短参加企業の総労働生産時間減少による影響は(該当勤務時間について減給等の措置がない限り)ある程度免れないだろう。
対象企業が、有給休暇取得やプレミアムフライデー時短等の対象者の行っている仕事量を確保するためには、雇用者数を増やすか従業員の全体の仕事量を減少させるような売り上げ制限が必要となるからだ。
では、経済のプラス面はどうだろうか?

プレミアムフライデーが期待する消費増

インターネットリサーチ会社マクロミルの3月の調査から一部引用すると、「会社員・公務員のプレミアムフライデー認知率は92%、職場での導入率は7%」で、導入企業の早帰り対象者のうち、実際に早帰りができた人は半数強だった。但し、早帰り者の8割が立ち寄り等の外出をしていた。
※金曜早帰りの過ごし方1位は「外食」5割強、2位「ショッピング」が4割で「旅行」はわずか3%

www.macromill.com


実施後3ヶ月を経過し、プレミアムフライデーの認知度はさらに高くなったが、実施企業はまだ一部で、現段階で、消費を増加させる動きまでは見られない。
経産省においても、プレミアムフライデー実施前に世耕大臣は記者会見でその経済効果を1200億円程度と述べたが、これに関する政府試算は存在しないことを認めており、経済効果の波及に自信は無い様だ。

www.meti.go.jp


この「1200億円(正確には1236億円)」という数字は、国内の全会社員全がプレミアムフライデー利用との仮定であり、後述する現状の実施割合を全労働者に当てはめた場合には、経済効果は100億円程度にとどまる。
未だ限定的なプラス効果だが、消費拡大につながる側面はここまでの実施により、一定程度は実証されたようだ。

今後のプライムフライデーで期待できる経済効果について、消費拡大の可能性を具体的な消費増加方策の提言も合わせて考えてみたい。
プレミアムフライデーの経済効果が見込まれる業界・業種はいくつかある。
一例として、外食産業、百貨店などの小売業、旅行業、映画(鑑賞、コンテンツ購入等)・芸術(ライブコンサート、イベント等)、学習(市民講座、生涯学習、フィットネス・ジム利用等)、スポーツ(観戦、実施)等々があり、また、余暇を利用する副業やアルバイト、NPO活動等の活発化もあるかもしれない。
こうした経済効果を、今後大きく増加させることはは可能だろうか?

予想外だった「日本版ブラックフライデー」の消費

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出典:advertimes.com

2016年イオングループでは、米国のブラックフライデー時期、月末の三日間にイオンモール等で限定品や普段は値引きしない特価品を主体とした大規模な安売りセール「日本版ブラックフライデー」を打ち出した。
結果は、目玉商品の思い切った値引きも奏功し、予想以上の来店者と売り上げ増となった。

www.nikkei.com


このことから、消費マインド減衰下の日本国内においても、特別の動因さえあれば消費者は反応する事が分かる。年々加熱する国内ハロウィン消費の動向からも見て取れる事だ。
ただ、やみくもにセールを打っても即消費増にはならない。日本版ブラックフライデーの成功にはいくつかの要因がある。

従来型予測では読めない消費者動向

40年を越える歴史がある米国のブラックフライデーは、通常絶対に値下げをしない高級ブランド商品の値下げ等が評判を呼び、次第にお祭り騒ぎに近いイベント性を強めている。
日本版ブラックフライデーは、ここ数年のセール成功の延長上にうまく乗り、セールに前向きなメディア報道も成功を後押ししたようだ。

更に、SNS等での拡散もセール認知に寄与した。「君の名は」や「ピコ太郎」人気が示すように、SNSでの拡散が爆発的な認知度向上につながる傾向は強まるばかりだ。
バレンタイン商戦から、ホワイトデー、恵方巻、ハロウィン等の事象から日本版ブラックフライデーの盛り上がりを俯瞰すると、インパクトのあるネーミング、消費者の認知上昇、加えて適切な消費コンテンツ(仮装、恵方巻等という新しい概念、価値など)の提供があれば消費者は予想以上の反応を見せることが見て取れる。

プレミアムフライデーによる経済効果の実現方策

こうした新たな盛り上がりが、プレミアムフライデーの経済効果として実現出来るだろうか。
年度末と重なった2017年3月29日の実施企業は、経産省によると、早帰りを呼びかけた企業は初回の130社から、316社に増え、直近4月28日の場合は、新年度入りしたこともあり、プレミアムフライデー事務局では、ロゴマーク申請企業(団体)は7千弱と、実施直前の3倍近くまで増加している。

premium-friday.com


各種調査を総合すると、国内企業の数%、上場企業では1割以上が、何らかの形でプレミアムフライデーの実施を行っているようだ。
もちろん実施企業はまだ一部であり、さらにプレミアムフライデーの消費効果と経済への波及効果を実現するには、政府、経済界の普及活動や、各種メディアも巻き込んだ、新しい仕掛け、新味のあるイベント等が期待される。

ここまでの動向をみると、単に実施企業の増加やプレミアムフライデー制度の普及を進めるだけではなく、プレミアムフライデーを新しい価値を生みだすイベントとしての認知度を重視し、企業にとどまらない消費生活全体の定着度を上げてゆくべきだろう。
そのためには、これまでの数回の実施で増加した消費活動や数値内容を集計するだけではなく、アンケート調査やプレミアムフライデー関連のニュースを地方に至るまで丹念に掘り起こし、ビジネス以外の利用目的(例えばプレミアムフライデーで実施できた消費以外の個人的な楽しみやリラクゼーション)もサンプリングしたい。
そうして得られたビッグデータを解析すると、少子高齢化、人手不足の日本経済に何らかのプラスインパクトを期待できるかも知れない。

永続的成長要素を根気よく定着させていけば、いずれ大きな経済効果を生む筈だ。
〔注意したいのは、最近の企業の商品開発姿勢が、短期の成果にとらわれすぎであること。未知の/新たなトレンドやイノベーションには、ある程度の時日が必要だ〕
例えば、外食産業では、プライムフライデーだけでしか味わえない限定数販売のスペシャルディナーや、当日生産・輸送高級食材による時限(18時迄)格安メニューなどを、拡散しやすいネーミングとともに、前例の無い付加価値を付けた文字通りの「プライムメニュー」を提供する。
旅行業界においても、言われているような、2.5泊旅行や特別企画旅行より、近郊の0.5泊旅行(金曜夕食+温泉、朝食なしの格安企画など)など、従来の宿泊業の常識にないサービス提供であれば、これまでにない新たな需要を生む可能性がある。関連領域として、大規模テーマパークの15時から19時迄の入場者限定特別企画なども効果があるだろう。

プレミアムフライデーの消費と経済効果

他の業種・業態も含め、プライムフライデーによる、導入企業によるプラスの経済効果を期待するのであれば、単純にオフの時間増加分だけ消費が増えるという安易な予測を捨て、個人消費に新たな需要を喚起する努力、民間企業に限定しない公企業を含む広範な取り組み、新たな時間帯でニューコンセプトを創造するなどの姿勢が必要だ。

例えば、「ブラックフライデー」のような特別感のあるキーワードとのリンク、ハロウィンにおける「仮装」のようなキラーコンテンツに等の付加により、「プレミアムフライデー消費」を一種のブランディング戦略として推進できれば、日本発の試みとして世界的にも認知されそうだ。

www3.nhk.or.jp


また、並行して、少子化・人手不足の深刻化を考え合わせると、プレミアムフライデーの普及にあわせた、「働き方改革」とのリンクも忘れてはならないだろう。
こうした取り組みが成功すれば、国内消費全体の増加に加え、健康増進や文化活動の活発化などプライムフライデー関連の副次的経済効果もあるだろう。
こうした展開が成功すれば、国内GDPの飛躍的な増加にまでつながる大きな経済的影響として期待できるかも知れない。 

 

コラム執筆者

f:id:Money_Clip:20170111181053j:plainK. 和気
損害保険会社等で担当者約5年、決済責任者を含め通算10年以上にわたり数百億円に及ぶ単独資金決済運用(最終決定)を担当。現在は非常勤顧問として勤務の傍ら、マーケットや経済情報をタイムリーに取り入れ、株式・為替・債券等にて資産運用を行い、日々実益を出している。